たっぷりの木洩れ日を浴びながら、地面に咲いている花の横に寝転がる。
木の葉によって歪に切り取られた空。写真をとりたくなるのはこういうときだ。森へ来るときはいつもそう。

木ばっかりだなんて思ったら大間違いで、たくさんの風景に目を奪われる。
ぽつんと咲いている健気な花とか、見たことのない形の葉っぱだとか。
でもリーマスに言わせれば、そういうものは心にしまっておく方が良いのだそうだ。




リーマスは傍にあった木に器用に登り、一番太い枝に腰を掛け、脚をふらつかせていた。
思わず見とれてしまうような白くて細いくるぶし。


目が痛くならない?

リーマスに訊かれて、どうしてと訊くと彼は空を見上げた。


だってほら、空の色って目に染みるから。
そんなの聞いたことないよ。
そうかな。
そうだよ。


リーマスは特に気にせず、脚をふらつかせたまま木に寄り掛かる。
落ちはしないのだろうかと心配したけれど、一向に大丈夫だった。


僕は空を見てると目が痛くなって、いつも泣いてしまうんだけどなあ。


突拍子もなくそんなことを言う。あたしの彼はロマンチストだ。
くるぶしから目を離して、あたしはもう一度空を見上げる。リーマスが泣いてしまうという空。


今は見ていて大丈夫なの?
うん。
どうして?
緑色があるから。
森の?
そう。


じぐざぐとなった青空は窓のようで、ふと飛び立っていきたいと思った。
あたしは手を伸ばし、空を掴む。

何の手応えもなかったけれど、空の一部分を手の中に捕らえたと想像して、あたしは手のひらを握り締める。


なにしてるの?
空を捕まえたんだけど、
・・・・・・だけど?
どうしたらいいのかな。これって。
どうしたらって・・・あはは、君はロマンチストだね。
・・・リーマスだって。


リーマスが枝から飛び降りる。
シャツの裾と鳶色の髪が煽られて、額の線がくっきりと見えた。
その動作がなめらかで美しかったから、もしかしたら彼は飛べるかもしれないなとそんなことを思った。


帰ろうか。
うん。


掴んだ空を手放さないように、気をつけながら起き上がる。
こういうときに、手を差し伸べてくれる人があるのは素晴らしいと思う。
細いけれど、大きなその指先。


空、瓶に詰めてみたら?
瓶に?
うん。


遠くに城を目指して歩きながら、リーマスが笑った。


夜になっても色が青いままだったら教えてよ。




空はひろがる   












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