気に入りのCDをずっと聞いている。
ステレオのヴォリュームを最大にしているから、既に聴覚と三半規管がおかしくなっていたけれど、そんなことはどうだってよかった。ソファにだらりと倒れこんで、喘ぐように息をする。口元は自然に笑む。吐きそうでサイコーに気持ちイイ。ああもう、殺してぇ。
大音量の不協和音の波がぐわんぐわんと俺の脳を揺らして、じっとしているはずなのに身体は何故か浮遊感を感じるので立ち上がることなんてできやしない。重度の熱病患者とか頭をグレッチでぶん殴られたとかそんな感じで癖になる。コカインみてぇ。後ろから犯されてるみてぇ。そういうの大好き。
舌なめずりをして唇を湿らすと、下腹のあたりが熱くなってきたので一度喘いで顎を反らす。衝動に身を委ねようと臓腑の奥深くまで澱んだ空気を吸い込んで、あまりの埃っぽさに続けざまに二、三度むせた。あいつが見たらなんていうかな?その前に、こんな耳にガラス片をブチ込むような音にあいつはキレるだろーなと考えたら、何故だか笑えてきた。暗い眼窩の中でめん玉がぐるりと回ったように部屋が一周して、喉の奥から激しい嘔吐感が突き上がってくる。狭い部屋の中で永遠に繰り返される音楽は確実に俺の脳を犯しているようだ。
「セックスしてぇ。」だらりとした声で半ば無意識に呟くと、ここに居るはずのないギアッチョの瞳がこちらを振り向いた。牛乳まみれの野良犬を拭いたあとの雑巾でも見るような眼差しで、相当やべえしゾクゾクする。誰でもいいってわけじゃないんだぜ、アンタだからだ、アンタにだけもっともっと追い詰められたい。
いつの間にか俺がギアッチョの上に馬乗りになっていたので、これはスゲーいいシチュエーションじゃねぇか、と思いながら身をかがめた。笑んだ口元から垂れ下がる舌と押さえのきかない下半身がソートー熱くて焼ききれそうだ。既に完璧に崩れ去ったバランス感覚と俺を突き上げる衝動が大音量の音楽に乗って無限にループする。すげえ楽しいと思っていると、目の前のギアッチョが、発情期の犬かテメーは、と言ったのでますます愉快で声をあげて笑った。そうなんだよアンタのこと俺はこーいう目で見てるし届かなくたってかまわない最初から分かってるから。引き攣る喉でかろうじて呼吸をしたら涙がでた。悲しくなんかないしサイコーにハイだし今なら死んだっていいってコイツの目の前でなら、そう思う。ひくつくギアッチョの喉笛に薄笑いながら歯をたてて「アンタの犬にして欲しい」と呟いた。






君のなら、悪くない





-070501
































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