吐き出した煙にもう一度息を吹きかけて遊ぶ。
海を漂う海月みたいに伸び上がっていくその様が面白くて何度も繰り返していたら、ギアッチョに怒られた。
副流煙がどうたらこうたらと。


「だから俺と居るときにタバコなんて吸うんじゃねーっつってんだろうがこのボゲが!」
「いいじゃあねーか、俺とあんたは一蓮托生だろ?健やかなるときも病めるときも肺ガンになるときもさぁ。」
「タバコで指を火傷して死ね。」


それは色々と無理のある死に方だ、と思っていると、ギアッチョがキッチンの方に歩いていったので、ついでに水を取ってくれと頼む。


「ガスは?」
「アリ。」
「おらよ。」


キレイに弧を描いて飛んでくるペットボトルを、片手で受け取る。
冷たい水を喉に流しこんで初めて、どれだけ俺が渇いていたかを知った。
つうか暑ィよ。
馬鹿じゃねーのかこの暑さ。


「ギアッチョー。」
「伸ばすな。気持ち悪ィ。」
「愛してるぜえ。」
「知らねぇよ。」


知らねぇよ、と返すギアッチョの声が笑っていたので、俺は嬉しくなった。マジでこいつはイイヤツだ。バカでキレてて頭が良くて、最高におもしれー男だ。
「おれも知らねぇー。ばかだから。」と笑って返す。
目を閉じると、珍しく機嫌のいいギアッチョの声が、心地よく脳に滑り込んできた。


「俺は知らねぇ。」
     「お前のことなんて。」
             「なーんも。」


サイコーだ、と思った。
冷たい水を浴びるように飲んで、またタバコをふかす。ぼんやりしてたら指を火傷したので、「SHIT!」と吐き捨てると、ギアッチョが「これでお前は、いっぺん死んだ。」と言って笑った。














知るか

-070427
































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